2015年10月23日金曜日

司法試験合格への戦略(総論)・その2(司法試験の短答対策)

こんにちは。

今回は司法試験の短答の対策についてです。
短答の知識があると論文も伸びるので、論文→短答より、短答→論文の順で対策した方が良いと思い、まずは短答の対策から書くことにしました。

まず、前回の内容について確認しておきます。

前回は、司法試験に合格するにはどれくらいの点数が必要か、という点について確認しました。
そして、結論としては、短答で8割5分、論文で5割5分、を得点できるようにすれば十分合格圏内になる、ということでしたね。

そこで、今回は短答で8割5分を得点するためには、どうするか、というか、短答の勉強をどうするか、について書いていこうと思います。


ちなみに、筆者は今年(2015年)の司法試験では8割5分程度得点した、ということを前提に読んでもらえればと思います(今年は平均点が上がったという点も前提としてください)。

使用したのは、辰巳法律研究所の出している肢別本です。

肢別本〈1〉公法系憲法〈平成27年版〉
肢別本〈3〉民事系民法1 総則/物権〈平成27年版〉
肢別本〈4〉民事系民法2 債権/親族/相続/要件事実〈平成27年版〉
肢別本〈7〉刑事系刑法〈平成27年版〉


使い方については、平成24年の予備試験に合格された方のブログを参考に少しアレンジしました。
(こちら→http://ameblo.jp/takayo328/entry-11921743520.html)

簡単にまとめておくと

①1周目は解説を読んでいく。この際にキーワードにマーカーしておく。
②2周目はキーワードを中心に解説を読んでいく。
③3周目くらいから、問題を解いていく。ただし、分らなかったらすぐに解説を見る。
④4周目以降は③を繰り返す。

という方法です。
この方法のポイントは、最初に読むべきところを限定しておく、何度も繰り返す、という2点にあると思います。

先ほど述べたように、筆者はこの方法にいくつかアレンジを加えました。

まず、アンダーラインを引く作業については、筆者はキーワードだけマークというのがしっくりこなかったので、文章の核にだけアンダーラインを引くということをしていました。

例えば、「○○はAではなく、Bである」という解説がある場合には「Aではなく」というところは、BはAではない、ということをはっきりさせる役割を担っているだけで、「○○はBである」としても意味の中核は変わりませんよね。
そこで、この場合は、「○○は」と「Bである」というところだけにアンダーラインを引いていきました。
こうすると、次からはアンダーラインを引いてあるところだけを読んでいけばいいので、かなり時間の短縮になります。

もう一つは2色で引いていったことです。
司法試験の短答においては、判例知識(それも法廷意見なのかどうか)であるのか、それとも、学説・条文の知識であるのか、という点を区別しておくことが特に大事になります。
そこで、判例についてはピンク、学説・条文等の知識については赤でアンダーラインを引いて、常にこの区別を意識するようにしました。

ペンは消せるものを使っていました。何周かしているうちに不要な部分にアンダーラインを引いていると感じることがあるので、その際に修正がきく方が良いと思ったからです。
最後は、最初から全部やるのではなく、飛ばし飛ばしでやっていったことです。
これは、最初から全部をやると一周するのに時間がかかりすぎて、やる気が削がれるので、早めに終わる方法をとるという理由です。

まず1周目は、★マークがついている肢の解説にアンダーラインを引く作業をしていきました。

この★マークはわりと精度が高く、これをやっておけば周辺の肢の多くも解けるようになっているので、まず最初にやるべきはこれかなと思います。


次に2周目は、新司の肢の解説にアンダーラインを引く作業をしていきました。

これは、短答においては、旧司法試験と新司法試験では新司法試験の方が重要性が高いという判断からです。

司法試験の短答対策として、肢別本は使わず、過去問集だけで勉強している人もそれなりにいます。なので、過去問集には新司の過去問は掲載されていますが旧司の過去問は掲載されていないので、他の人に差をつけられないという観点からは、新司の肢が優先されるべきということです。
あと、これである程度新司の傾向も感覚的につかむことができると思います。

最後に3周目に、旧司の肢の解説にアンダーラインを引いていく作業をしました。
もし時間がないのであれば、これを飛ばすのも一つの方法だとは思います(まだ10月なので十分時間はあると思います)。
完全な感覚ですが、憲法の統治、民法契約各論、刑法総論の罪数、刑法各論、あたりは旧司の重要性が高い気がします。なので、本当に時間がないのであればこのあたりだけでも押さえてもらえればと思います(保証はできませんが)。


以上の3周で、オリジナル肢以外は押さえることができます。
オリジナル肢はやらなくても大丈夫だと思いますが、憲民刑の3科目のオリジナル肢は少ないので、やっておいて損はない、程度だと思います。

あとは、ひたすら回すだけです。
そして、5周目(全部アンダーラインを引いてから2周目)くらいから、間違えた肢にチェックを入れておき、直前はこれをメモ帳などにまとめて、試験当日の休み時間はメモ帳と六法だけをみていました。


司法試験の短答の対策としては、こんな感じです。

どうでしょうか。これくらいやれば司法試験の短答対策としては十分だと思いますし、かっちりした知識は論文試験にも活きてくると思います。

2015年10月15日木曜日

予備試験口述対策その5(直前期)

予備試験の論文式試験に合格された方、おめでとうございます。

直前期の過ごし方と、当日の流れについて書いておきます。参考になれば幸いです。

1.直前期の過ごし方
 直前期は、自分が条文に弱い(特に刑法・民法)ということを感じていたことから、刑法は各論部分の条文、民法は契約に関する部分、債権総論部分についての条文を確認していました。

 もちろん全部の条文を覚えるのは無理なので、売買契約であれば555条、というように、キーになる条文番号を覚えるようにしました。
 このあたりは、基本書やテキストを読みつつ、何度も出てくる条文を押さえるという形でいいと思います。

 他に、よく間違えるものや、覚えられないものについて、メモ用紙に箇条書きにしておき、これをホッチキスで留めて持ち運んでいました。
 
 やりかたはどうであれ、前日や当日の待機の間(場合によっては数時間待ちます)に確認すべきことをまとめておくことはしておいた方がいいと思います。

 あとは、前日にでも一度は試験会場までの道を下見しておくといいと思います。
 当日に迷うと焦りますし、初めて行く場所というのは緊張を生むのでそういう要素を一つでも減らしておくべきです。

2.当日の流れ
(1)試験会場まで
 まず、試験が午前か午後かという大きな分かれ目があるのですが、筆者はどちらも午後でした。

 午後開始ではあるのですが、遅刻が怖かったので、かなり早い時間帯に最寄の新浦安駅に着くスケジュールで動きました。
 そして、会場に近いジョナサンで時間をつぶしていました(わりと混みます)。

 他に時間がつぶせそうなところとして、伊藤塾が提供している場所、駅前のマクドナルドやドトールとかですかね。

(2)試験会場に到着
 開場時間になるまでは入れず、また、開場直後は待つので、少しあとに行くぐらいが良いかなと思います。

 試験会場には、当日配られるカバーを靴につけて、入ります。
 入場手続をする際に、当日の部屋と何番目に試験を受けるか、の指定を受けます。
 また、ここで通信機器を電源を切った上で封筒に入れることを求められます(普通の郵便用封筒です)。携帯が想定されているので、封筒は小さめのものを渡されますが、タブレット等も入る大きめのものも準備してくれているようなので申し出て、もらえばよいです。

(3)試験会場に到着してから終わりまで
 先ほど書いたように、入室する際に、○○室○○番、というふうに指定を受けるのですが、これに基づいて、待つ椅子が指定されます。
 椅子はパイプ椅子です。

 そこで、順番が来るまで待ち、呼び出されると、待合室に通されます。ここで、前の人の試験が終わるのを待ち、前の人が終わったら呼び出されて、試験室に入る、という流れです。

 午前に試験を受ける人は、試験が終わっても午後試験の人が入室するまで退場できないようですが、午後に受ける人は終わった人から試験場を出ることになります。

 これで、口述試験は終わりです。

 2つ付け加えておきます。
 まず、トイレですが、何人かまとめて行くことになります。手を挙げて試験官に来てもらい、そこで前で待つように指示を受けます。
 前に5人程度集まった時点で、試験官に連れられてトイレに向かいます。
 少しでも時間を無駄にしたくなければ、2人くらい立っているときに手を挙げるのが良いですが、まあそんなに変わりません。
 トイレに行っていていないときに呼び出しがかかっても、それで失格になることや順番が飛ばされることはなかったです。帰ってくるまで待ってくれていました。なので、どうしても行きたければ、もうすぐ呼び出されるかもという心配はせず、行けばよいと思います。

 次に、待ち時間ですが、だいたい、1人15分くらいを目安に進むのですが、試験官や受験者によっては、それよりも時間がかかる場合もあり、最後の方だと、かなりの時間待つことになります。
(一番最後だと終わるのが18時前になることもあるらしいです。)
 なので、何か食べるもの、飲むもの、を準備しておくべきです。

 こんな感じです。
 当日のこととかで疑問があれば可能な限り答えますので、コメントに質問してもらえればと思います。

2015年10月3日土曜日

司法試験合格への戦略(総論)・その1

こんにちは。

今回から、2、3回で、司法試験合格へ向けてどういう戦略を立てていくべきか、ということについて、書いていこうと思います。

今回は司法試験についての分析をしていこうと思います。

0.試験制度
 司法試験は基本7法と呼ばれる憲法・行政法・民法・商法・民訴法・刑法・民訴法と選択科目の8科目について論文式の試験が行われ、加えて憲法・民法・刑法の3科目について短答式の試験が行われます。

 論文式が各科目100点の計800点満点、短答式が各科目100点の計300点満点、でそれぞれ点数計算した後、論文式の点数を7/4倍したものに短答式の点数を足した点数によって合否が判定されます。
 (もちろん、論文短答ともに各科目の最低基準点を通過し、短答式は合計点数での最低基準点も通過することが前提です)

1.過去の合格最低点
 以上の試験制度を前提に、まずは過去10年間の合格最低点の推移を見てみましょう。

 平成18年:915点(短答+論文*7/4)
 平成19年:925点
 平成20年:940点
 平成21年:785点(短答/2+論文*7/4)
 平成22年:775点
 平成23年:765点
 平成24年:780点
 平成25年:780点
 平成26年:770点
 平成27年:835点(短答+論文*7/4)

 こんな感じです。合格点に大きな変動があるのは点数配分が変わった年ですね。
 
2.分析
 では、上記最低点をもとに、合格に必要な点数を計算してみましょう。

 ここでは、短答で8割の点数を取ることを前提とします。
 
 そうすると、論文で必要な点数(1400点満点)は

 平成18年:635点
 平成19年:645点
 平成20年:660点
 平成21年:645点
 平成22年:635点
 平成23年:625点
 平成24年:640点
 平成25年:640点
 平成26年:630点
 平成27年:695点

 となります。
 平成27年がやや高いものの、いずれの年も50パーセントの得点をすれば最低点をクリアできることがわかると思います。

あと、点数が比較的安定しているのですが、これは得点を偏差値みたいなものに変えてたものが得点となるからですね(詳しくは法務省HPで探してください)。

3.合格への戦略
 以上から、短答で8割の得点をすれば、論文は5割でなんとか合格できる、ということが言えます。

 もっとも、平成27年から短答が3科目になり、短答の得点率が上昇していること、加えて論文式の得点率もなぜか上昇していること、を踏まえると、少し余裕をもって目標を立てるべきです。

 そこで、

 短答で8割5分、論文で5割5分

 という得点を目標に試験への準備をすることを提案します。

 これであれば、総合点が918.75点となり、かなり余裕をもって最低点をクリアできるはずです。
順位としても1000番以内で入れるはずです。

 そして、先ほど触れたように、得点は調整が入ったものなので、 5割5分という得点目標は、ようは偏差値55あたりを取ることができれば達成です。
 ということは、平均より少しできる、という程度で十分に達成可能です。

 こう考えると、合格に必要なのは、難しいことができるようになることではなく、多くの人ができることを落とさない、ということになります。
 

4.終わりに
 以上みてきたところで、少しは合格への道筋が見えたでしょうか。

 よく合格者や講師が「基本が大事」ということを言うのは、5割5分取れるようになれば合格できる、すなわち、みんなが出来ることが出来るようになれば合格できる、という意味なのではないかな、と思います。

 今回はこのあたりで終わりです。次回は、「みんなが出来ること」を知るためにどうするか、それが出来るようになるにはどうすればよいか、ということについて書く予定です。

 ではでは。