こんにちは。
今回は、司法試験の倒産法の対策についてです。
といっても、そこまで点数が高かったわけではないので、使用した教科書等とその使用法についてがメインになると思います。
1.基本書・教科書
予備試験後司法試験まであまり時間がなかったため、全体的に、演習書をやりつつ、該当部分を読むという利用法でした。
(1)山本克己編著「破産法・民事再生法概論」(商事法務、初版、2012年)
授業の教科書として指定されて、使用しました。内容としては、かなりスタンダードだと思います。
定義がしっかりと書かれています。また、簡潔な記述でありながら破産法・民事再生法の違いを理解しつつ制度の概要を押さえることができるようになっています。
これを読んだうえで演習に進むということでも十分司法試験に対応できるのではないかなと思います。
一方で、調べものをするという使い方には少し物足りないかな、と思います。
(2)山本和彦ほか「倒産法概説」(有斐閣、第2版補訂版、2015年)
(使用したのは第2版でしたが、補訂版が出版されたのでそちらをリンクしておきます)
通読はせず、演習書であやふやだと感じた分野を読む、調べものをする、といった方法で使用しました。
この本の特徴は、独自の章立てであることです。それが理解につながる部分もある一方で、調べものをするには慣れるまで時間がかかりました。
また、一部かなり難しいところもある(というよりは、分量の問題で削ったために言葉足らずになっていると思われる部分がある)ので、書かれていることがすべて理解できなくてもあまり悩まないという視点も必要かなと思います。
(3)松下淳一「民事再生法入門」(有斐閣、第2版、2014年)
民事再生法の勉強のために、一読しました。
書名は「入門」となっており、それほど分量も多くはないですが、これで十分司法試験に対応可能だと思います。破産法についての基本的理解を前提に、破産法との比較で民事再生法について解説しています(破産法と同じ規律の場合は省略されています)。
(4)伊藤眞「破産法・民事再生法」(有斐閣、第3版、2014年)
とても分厚いです。この分厚さからもわかるように、通読せず(出来ず)、調べものをするために使用しました。
伊藤眞教授は破産法・民事再生法の大家ですし、重要な項目や、判例での決着がついていない分野については一読しておくのが良いと思います。
これも演習をしつつ、理解があやしいと感じた部分を読むということになるかなと思います。
2.演習書
演習書については、(1)~(3)の順で使用しました。
(1)新保義隆「論文基本問題 倒産法80選」(早稲田経営出版、2010年)
まず倒産法の答案の書き方・基礎知識を確認するために使用しました。
使い方としては、問題を読んだ後、いきなり解答例を読み、そのなかで他の問題にも使えそうなものを下線をひいていく、というものでした。
2010年のものなので、既に判例があるものについてそれとは異なる学説で解答していたりする部分もあり、他の本でセカンドオピニオンすることも必要ですが、全体的に非常に役立ちました。
どういった部分が論点になるのか、という相場観を得るにはちょうどいい問題集だと思います。
(2)「司法試験・論文過去問 倒産法 答案のトリセツ」(辰巳法律研究所、2010年)
司法試験の過去問を知るために使用しました。
解いてもらえればわかると思いますが、司法試験のうち最初数年はかなり問題が単純です(これは新司法試験開始数年は法改正から日がないことが理由かと思われます)。それゆえ、基本の確認になると思います。
参考答案として上位答案だけでなく中位答案が載っている点がとても参考になります。どの程度書ければどの程度の得点ができるか、という感覚を得ておくことも司法試験の対策として有用なので。
平成23年のものまでしかないので、改訂を待っていたのですが、趣旨規範ハンドブックとまとめたものとして「司法試験論文対策 1冊だけで倒産法―破産法・民事再生法」が出版されたので、しばらくはこの本の改訂として出されることはないのかな、と思います。
(3)山本和彦編著「倒産法演習ノート―倒産法を楽しむ22問」(弘文堂、第2版、2012年)
有名な演習書です。司法試験の過去問と並行して、解いていきました。
最初は答案を作成していましたが、途中からは答案構成をして、解説を読む、という方法に変えました。
基本的なものから、かなり難易度の高い問題まであるので、どうしても理解できないものは諦めるという視点も大事です。
例えば否認権の行使の可否の解説などは、かなり整理されていて非常に役立ちました。
解説の読み方としては、そこで引かれている判例については百選などで確認する(解説も読む)、参考文献として挙げられているものも論文は読む、という形で読んでいきました。
この演習書が完璧できれば司法試験で合格点を十分得点できると思います。時間をかけてやる価値がある本だと思います。
3.判例集
(1)伊藤眞・松下淳一編「倒産判例百選」(有斐閣、第5版、2013年)
やはり、学習用の判例集ということではこれが定番だと思います。倒産法の百選は、学者だけでなく実務家の方も解説を書かれているという点が一つの特徴です。
これは、倒産法は実務家と学者で勉強会がされることが多いことや、倒産法が実務によって動いてきたという点が大きいのではないかと思います。
司法試験では判例から少し事情をかえて判例の射程を問うてくる問題が出題されることがあるので、解説まで読んで射程について理解しておくことが重要になります。その観点からも、百選は重要だと思います。
(もっとも、筆者は時間がなく、全ての判例の解説を読むことなく試験を迎えてしまいましたが)
(2)瀬戸英雄・山本和彦編「倒産判例インデックス」(商事法務、第3版、2014年)
「こういう判例があった」という引っ掛かりを頭の中につくるための本です。
事案の概要と判旨が中心で、解説はほとんどありません。それゆえ、この本のみで、判例の学習が十分だと言い切ることはできません。
しかし、「こういった事案について、このような判旨の判例がある」ということの整理ができる本だと思います。また、参考文献へのリファレンスがしっかりしているので、より詳しく理解したければそちらを読めばよく、そこまで問題ではないかと思います。
筆者は3月頃に、1日30個ずつ読んで1週間程度で読み終えましたが、もう少し早い段階で読んで何周かしておけば良かったと思います。
とりあえずこの本で判例の基礎を押さえたうえで、重要な判決について百選で解説を読む、あるいは演習を重ねる、ということがこの本の使い方なのかなと思います。
4.その他
(1)全国倒産処理弁護士ネットワーク編「論点解説 新破産法〈下〉」(金融財政事情研究会、初版、2005年)
破産法の改正にあたり出版された、破産法の各論点について解説した本です。
学者と実務家の方の論稿が掲載されています。
これを購入したのは、「倒産法演習ノート―倒産法を楽しむ22問」の参考文献として挙げられていることが多く、一々コピーをするのが面倒になったからです。
破産法改正時期の出版であり、改正当初の予想とは異なる運用になった部分もあるので注意が必要ではありますが、論点について整理がされていて、非常に参考になりました。
また、改正の経緯や改正当時の議論を知ることが出来ます。こういった経緯・議論は、判例での条文解釈にも影響を与えるので、知っておくと役立つこともあります。
(2)辰巳法律研究所「司法試験論文対策 1冊だけで倒産法―破産法・民事再生法」(2015年)
趣旨規範ハンドブックと、過去問集を1冊にまとめたものです。
まとめ用として利用しました。使い方は、演習書で理解が不十分だと思ったところを基本書等を読みつつ書き足しておく、という方法でした。
5.まとめ
倒産法の試験対策として利用したのは大体以上です。
これくらいをしっかりとやれば司法試験の合格点を得点することは十分可能だと思います。
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